10月12日(日)、来年8月8日(土)・9日(日)に「南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク」で開催予定の「第16回 地震火山こどもサマースクールin南アルプス」に向けて、観察場所や施設の下見を行いました。開催予定地は伊那市内ですが、地質の博物館として、大鹿村中央構造線博物館も協力することになっています。

 地震火山こどもサマースクールとは、小学生~高校生を対象とし、「①研究の最前線にいる専門家が、こどもの視点にまで下りて、地震・火山現象のしくみ、本質を直接語る」、「②災害だけでなく、災害と不可分の関係にある自然の大きな恵みを伝える」、以上の2つの目的のため、日本地震学会と日本火山学会が中心となり、1999年から、ほぼ毎年夏休みに全国各地で開催している恒例行事です。2008年から災害と自然の恵みを実感できる「ジオパーク」の運動が国内でスタートしたことを受け、2011年からは日本地質学会も加わり、実施しています。

 ちなみに、南アルプスで日本ジオパークネットワークに加盟(日本ジオパーク委員会が認定)している地域は長野県の飯田市・伊那市・富士見町・大鹿村のみで、静岡県と山梨県は未だ登録されていません。そのため、「中央構造線エリア」という注意書きが付くのです。

 今回の下見では宿泊施設の「高遠少年自然の家」や中央構造線などの露頭、南アルプス林道内のジオサイト、石拾いを予定している河原などを視察しました。地震学会や地質学会の会員である学校の先生や研究者、伊那市職員など、合計12名で実施しました。
 伊那市の各ジオサイトでは、先月の全国大会に合わせて解説看板が設置されており、露頭などは見やすいように整備されていました(一部、現在も工事中の箇所あり)。

溝口露頭は離れた所から全体が観察できるよう整備中

溝口露頭は離れた所から全体が観察できるよう整備中

 南アルプス林道は、伊那市から北沢峠(標高2,032m。山梨県南アルプス市と長野県伊那市の境界となる峠)へ続く道です。通常、自動車は林道バスのみ通行可能なのですが、今回は伊那市の許可を頂き、直接乗用車で下見を行うことができました。ジオサイトは林道の途中に数カ所あります。所々にバス停もあり、歩いて登る人は途中で乗ることもできます。本番は通常通りバスを利用する予定です。石灰岩の露頭や仏像構造線(秩父帯石灰岩と四万十帯砂岩泥岩互層の境界。九州まで続く大断層)の唐沢露頭などを視察しました。

向かい側に「幕岩」と呼ばれる石灰岩の岩壁が見える

向かい側に「幕岩」と呼ばれる石灰岩の岩壁が見える


草で隠れているが、仏像構造線の境界の唐沢露頭

草で隠れているが、仏像構造線の境界の唐沢露頭

 本番は夏ですが、今はちょうど周囲の山々が色づき始めたところで、この林道は紅葉の絶景ポイントでもあるそうです。ちなみに、大鹿村の紅葉はまだ先のようです。

秋は紅葉も楽しめる

秋は紅葉も楽しめる

 石拾いは黒川と三峰川の合流点付近の河原で行われる予定です。石は自由に拾わせるよりも、指定した石と同じものを探したり、同じ種類の石を集めるなどの方法が良いとされ、どこまで子どもにやらせるかが論点となっていました。

石拾い予定地の河原。2つの川の合流点に近い

石拾い予定地の河原。2つの川の合流点に近い

 1日だけの下見では決まらなかったことも多かったのですが、今後、開催に向けて着々と準備が進められていきます。観察場所や施設は全て伊那市内となりますが、見所が沢山あり、充実した内容になりそうです。